【遺産相続】特別代理人とは?選任が必要になるケースや流れ
本記事は、執筆時の情報を元に掲載しております。最新情報とは一部異なる可能性もございますので、ご注意ください。
遺産相続にあたって未成年者の相続人や、認知症などが原因で成年被後見人になっている相続人がいる場合には、「特別代理人」を選任する必要があります。
当記事では特別代理人が必要になる具体的なケースや、選任する際の流れをご説明します。
目次
1.特別代理人とは?
未成年者や成年被後見人はその判断能力を理由に、遺産分割協議への参加をはじめとした相続の手続きを行うことを認められていません。
そのため未成年者・成年被後見人である相続人を含めて遺産分割を行う際には、代わりとなって参加する代理人を立てる必要があるのです。
この時に未成年者にとっての親など、本来であれば代理人となるべき人が利益相反との兼ね合いから代理人として不適当とされた場合、第三者を一時的な代理人として選任します。
これが「特別代理人」です。
2.特別代理人が必要な場合
それでは、具体的にどのようなケースで特別代理人の選任が必要となるのでしょうか。遺産相続においては以下の2つが代表的です。
未成年者とその親が同時に相続権を得ているケース
例えば妻と未成年の子を持つ男性が亡くなった時、妻は男性の配偶者として、子は男性の実子として、どちらも遺産を相続する権利を持っています。
このケースでは子の相続分を減らせば妻(子にとっての親)がより多くの遺産を相続することができる(利益が相反している)ため、妻の代わりとして特別代理人が必要になるのです。
成年被後見人と成年後見人が同時に相続権を得ているケース
認知症などが原因で成年被後見人となっている人とその後見人が同時に相続人になった場合にも、同様に特別代理人を選任する必要があります。
なお被後見人の財産が多いなどの理由で後見人に「後見監督人」が付いている時には、後見監督人が代理人の役割を担うため、この必要はありません。
3.特別代理人選任の流れ
特別代理人の選任は家庭裁判所による審査を経て行われます。
おおまかな流れは以下のとおりです。
1.申立てに必要な書類の用意
家庭裁判所に特別代理人選任の申立てを行うにあたって、用意しなければならない書類は大きく分けて3種類あります。
・特別代理人選任申立書
家庭裁判所に取りに行くか裁判所のWEBサイトからダウンロードしたものを印刷し、800円分の収入印紙を貼り付けます。
・戸籍に関する書類
未成年者(成年被後見人)とその親(成年後見人)の戸籍謄本、特別代理人の候補者の戸籍附票がそれぞれ必要です。
なお特別代理人の候補者に限っては住民票でも代用することができます。
・利益相反に関する資料
どのように遺産を分割する予定であるかを示した遺産相続分割協議書案や、不動産の登記事項証明書や預金残高証明書などの相続財産を明らかにする資料を、ケースに応じて用意します。
2.家庭裁判所による審理
必要な書類をそろえて申立てを行うと、家庭裁判所による審理が始まります。
審理には約1ヶ月かかり、「未成年者(成年被後見人)にとって不利な相続になっていないか」を基準に選任の認否が決まります。
3.特別代理人の決定
家庭裁判所によって選任が認められた場合には、特別代理人であることを示す「特別代理人選任審判書」が送付されます。
4.特別代理人が必要な時の遺産分割協議とは
遺産分割協議において特別代理人は、未成年者(成年被後見人)が法定相続分を相続できるよう、その権利を確保する必要があります。
そのため遺産分割協議書案も同様に、未成年者(成年被後見人)の法定相続分が確保されたものでなければなりません。
しかし実際には、法定相続分を下回るような相続の内容であっても、協議の内容が合理的であると家庭裁判所から認められることもあります。
例えば、親と子で遺産を相続する場合に、法定相続分にあわせて分割するのではなく、親がすべての遺産を相続して子の養育費・学費に充当するといったケースです。
このように合理的な理由がある場合には、申立書の中にある「申立ての実情」の項目や遺産分割協議書案にその旨を記載しておくことで、家庭裁判所から特別代理人の選任を認められやすくなります。
5.おわりに
遺産相続における特別代理人の選任について押さえておきたいポイントは、以下の3点です。
・未成年者とその親、成年被後見人とその後見人が同時に相続人となった場合、未成年者(成年被後見人)が不利益を被らないために特別代理人を立てる必要がある
・特別代理人は家庭裁判所による審査を経て選任される
・一見すると未成年者(成年被後見人)に不利な分割協議であっても、そこに合理性があれば家庭裁判所に認められることがある
遺産相続で迷ってしまった際には、参考にしてみてください。
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