相続時精算課税制度 とは?~メリットについて~
本記事は、執筆時の情報を元に掲載しております。最新情報とは一部異なる可能性もございますので、ご注意ください。
「“相続時精算課税制度”とはなんでしょうか?」と問いかけた際、正確な説明ができる人は少ないでしょう。
財産を贈与する場合に利用可能となる特例の1種で、制度の概要を詳しく知っているとメリットを最大限に受けられます。
もちろん、メリットがあればデメリットも存在するため、双方をきっちりと理解する必要があると言えるでしょう。
本記事では、主に相続時精算課税制度におけるメリット面についてお伝えします。
デメリット面については別記事で紹介していますので、そちらも一緒に参考にしてみて下さい。
目次
4.将来値上が予想できる財産を贈与しておくことで節税になるケースがある
1.一度に2,500万円まで贈与可能
少子高齢化が問題視される昨今、高齢者の所持する資産を次の世代に有効活用してもらうことを目的として2003年に“相続時精算課税制度”が誕生・導入されることとなりました。
この制度は、毎年1月1日時点で60歳以上になる両親などから、20歳以上の子など直系卑属に対し財産を継承する場合に利用できます。
限度額である2,500万円までの税金を非課税にでき、上限に達するまでであれば数回にわたって利用が可能です。
受け取り側が利用するか否かを選択できますので、特定の人物からの贈与にはこちらを、別の人物からの贈与には“暦年課税贈与”を適用するといった方法での利用も可能です。
非課税となるのは先述した2,500万円までで、超過した場合は一律20%の贈与税が課せられます。
課税分は相続時に差し引かれ、仮に相続税額が少なかった場合は差額分が還付されます。
誤認されがちですが、この制度は税金を免除するためのものではありません。
相続発生時には、贈与の時点では非課税とした財産も相続財産に含めて相続税を計算する必要があります。
制度を利用した場合は、たとえ税金がゼロであっても贈与税の申告書の提出をしなければなりません。
少々手間はかかりますが、忘れずに申告しましょう。
2.遺産分割がしづらい財産を事前に贈与可能
土地や不動産などは、遺産相続の際に分配方法によるトラブルが起きやすい財産と言えます。そこで、制度を利用し生前に財産を贈与するとトラブルを防止することが可能です。
このように、相続時精算課税制度をうまく利用することによって得られるメリットはいくつもあります。上述した2,500万円までを課税なしで継承できるのは、大きなメリットのひとつと言えるでしょう。
一方、デメリットとしては、
①暦年贈与を利用できなくなる(場合によっては、こちらの方が税額は少なくなる)
*令和5年度の税制改正により、令和6年1月1日以後の贈与については、上記特別控除と別に毎年基礎控除額110万円を差し引けることになりました。
②相続の際に利用できる“小規模宅地等の特例”が適用されない
などが挙げられます。
制度の利用は、メリット・デメリット両面をみて慎重に考えましょう。
3.収益物件の贈与で財産の増加を防ぐことが可能
先述したメリット部分に関わりますが、制度の利用によって遺産分割時の総財産額を減らすだけでなく相続税をも抑えられます。
具体的に説明しますと、“収益物件”と呼ばれる賃貸アパートなど、他者へ向けて貸し出すことで収益を得る物件を早めに贈与しておくことによって、贈与後の収益が受贈者のものとなるため、相続発生時の財産総額の増加を抑えられるのです。
4.将来値上が予想できる財産を贈与しておくことで節税になるケースがある
収益物件に関わらず、今後価値が上がると予測される財産を贈与することで節税につながる可能性があります。
相続発生時には相続税精算課税による贈与財産も相続財産として加算されますが、贈与時の価額により加算されるため、相続時に物件価値が上がっているほど得をすることになります。逆を言うならば、財産価値が下がると余計な税負担がかかることになります。
将来性を見越して継承しましょう。
5.おわりに
相続時精算課税制度は、有効的に活用すれば相続人間のトラブルを防ぎ、税負担を軽減・節税することが可能です。
限度額である2,500万円までならば複数回にわたって利用できますが、一度選択すると同一人物からの贈与については“暦年贈与”は選択できなくなります。
さらに、小規模宅地等の特例など、財産贈与すると利用できなくなる制度があることも念頭に置いておきましょう。
相続時精算課税制度は便利な制度ですが、的確に将来を予測できなければ逆に負担を増やしてしまう可能性があります。
利用するか否かは慎重に検討しましょう。
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