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目次
1.はじめに:キャリアアップ助成金とは?
日本には、パートやアルバイト、派遣社員といった非正規雇用で働く方が多く、全雇用者の3分の1以上を占めています。雇用の不安定さが課題となることも少なくありません。
このような状況を改善するため、国が用意しているのが「キャリアアップ助成金」です。この助成金は、会社が非正規雇用の社員を正社員にしたり、給料や待遇を改善したりする取り組みをしたときに、国からお金が支給される制度です。
助成金は、会社が直接利益を得るためのものではありません。これは、会社が新しい雇用を生み出したり、社員のスキルアップを応援したり、給料や働き方を改善したりする「努力」を国がサポートするためのものです。社員の満足度を高め、会社をより良くしていくための「人への投資」と考えてください。
2025年4月からは、このキャリアアップ助成金の一部が新しくなりました。特に、正社員化コースの助成額や対象者が変わり、申請に必要な書類の手続きも一部簡素化されています。
非正規雇用の社員を抱える会社にとって、これは社員のキャリアアップを応援しながら、国の支援も受けられる良い機会です。この制度を上手に活用し、会社と社員が共に成長することを目指しましょう。
2.主なコースと、2025年4月改正のポイント
2025年4月以降、キャリアアップ助成金は特に「正社員化コース」と「賃金規定等改定コース」で大きな変更がありました。
① 正社員化コース:非正規社員を正社員に
このコースは、非正規雇用の社員を正社員にする会社を応援する制度です。
「重点支援対象者」と助成額
今回の改正で、助成額が「重点支援対象者」かどうかで大きく変わるようになりました。
「重点支援対象者」とは、特に支援が必要だと国が考えている社員のことです。例えば、会社に雇われてから3年以上たつ有期雇用の社員や、派遣社員、ひとり親家庭の親などが当てはまります。
助成額は、対象の社員が「重点支援対象者」かどうか、そして会社が中小企業か大企業かで変わります。
※「重点支援対象者」の場合、助成金は2回に分けて支給されます。
新卒社員の扱いは
新しく学校を卒業したばかりの社員で、会社に雇われてから1年たっていない場合は、この助成金の対象になりません。これは、この助成金が、すでに非正規で働いている人のキャリアアップを応援するための制度だからです。
主な要件
・正社員にする前の非正規雇用期間が6ヶ月以上必要です。
・正社員にする社員は、正社員と比べて給料やボーナス、退職金などの待遇に違いがあることが、会社のルール(就業規則など)に書かれている必要があります。
・正社員にした後、6ヶ月間の給料が、正社員にする前の6ヶ月間より3%以上増えていることが必要です。この3%アップには、基本給や毎月決まって払われる手当は含まれますが、ボーナスは含まれません。
・「正社員」とは、期間の定めのない雇用で、フルタイムで働き、昇給やボーナス、退職金のルールが適用される社員を指します。
障害者正社員化コース
正社員化コースには、障害のある方を正社員にする「障害者正社員化コース」もあります。
② 処遇改善支援コース:給料や待遇を良くする
このコースは、正社員にするだけでなく、非正規雇用の社員の給料や待遇そのものを良くする会社を応援する制度です。
●賃金規定等改定コース:非正規雇用の社員の基本給を3%以上増やすように会社のルールを変え、実際にお給料を上げた場合に助成金がもらえます。2025年4月からは、給料の上げ幅に応じて助成額が4段階に分かれ、最大で7万円の助成金がもらえます。また、非正規雇用の社員に昇給の仕組みを新しく作った場合、1つの会社につき1回だけ、20万円(大企業は15万円)が追加でもらえます。
●賞与・退職金制度導入コース:非正規雇用の社員のために、新しくボーナスや退職金の制度を作り、実際に支給したり積み立てたりした場合に助成金がもらえます。例えば、ボーナスは半年で5万円以上、退職金は6ヶ月で1.8万円以上積み立てるなどの条件があります。
●社会保険適用時処遇改善コース:非正規雇用の社員を新しく社会保険に入れるとともに、手当を出すなどして収入を増やした場合に助成金がもらえます。
これらのコースは、非正規雇用の社員の働きがいを高め、会社全体の活力を上げるために役立ちます。
③ キャリアアップ計画書の手続きが簡単に
助成金を申請するときに必要な「キャリアアップ計画書」という書類があります。2025年4月からは、この計画書を労働局に「認定」してもらう必要がなくなりました。
これまでは、認定のために書類のやり取りや修正が必要で、手間がかかることがありました。それが不要になったので、申請の準備がぐっと楽になります。ただし、計画書自体は引き続き作成し、取り組みを始める前日までに労働局に提出する必要があります。
④ 不正受給には厳しい罰則
助成金は国の貴重な税金から出ています。そのため、不正に受け取ろうとすると、とても厳しい罰則があります。
・もらった助成金を全額返さなければなりません。
・さらに、返したお金の20%の違約金と、遅れた分の利息も払うことになります。
・会社の名前が公表されることもあります。
・5年間、他の雇用関係の助成金も一切もらえなくなります。
手続きが簡単になった分、会社が自分でしっかりルールを守ることがより大切になっています。
3.まとめ:キャリアアップ助成金を活用して会社を強くする
キャリアアップ助成金は、非正規雇用の社員を正社員にしたり、待遇を良くしたりすることで、会社を強くするための大切な制度です。この制度を上手に使うことで、社員のやる気が上がり、会社に長く働いてくれるようになり、結果として会社の業績アップにもつながります。
2025年4月の改正で、制度はより細かくなりました。特に「重点支援対象者」の導入や助成額の変更など、知っておくべきポイントが多くあります。
制度が複雑になったり、不正受給への罰則が厳しくなったりしている今、自分で全てを正確に理解し、手続きを進めるのは大変です。書類の不備で助成金がもらえなかったり、思わぬトラブルになったりするリスクもあります。
そんな時は、社会保険労務士などの専門家に相談するのが一番です。専門家は、最新の制度をしっかり把握し、あなたの会社に合った最適な活用方法をアドバイスしてくれます。書類の準備から申請まで、スムーズに進めるお手伝いもできます。
ティグレグループでは、キャリアアップ助成金に関する無料診断も行っています。ぜひお気軽にご相談ください。助成金を上手に活用し、社員も会社も共に成長していきましょう。
記事:社会保険労務士法人ティグレ 中村純一
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