家族信託による認知症・事業承継対策

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「将来の認知症が不安」

「事業を後継者に承継したい」

 

超高齢社会の到来により、認知症高齢者の人数はますます増えています。厚生労働省の発表によると、2025年には65歳以上の5人に1人が認知症になると言われています。認知症により判断能力がなくなると資産が凍結されてしまい、預貯金の引き出しや不動産の処分などが困難になってしまいます。

 

家族信託を活用した認知症・事業承継対策

近年、認知症対策として「家族信託」が注目されています。家族信託とは、財産の管理を信頼できる家族に託す制度です。親が元気なうちに子供に財産を信託しておけば、親が認知症になっても資産凍結を防ぐことができます。財産の所有者である「委託者」が「受託者」に財産を信託することで、受託者の判断で財産の管理・処分ができるようになります。信託財産から生じる利益は「受益者」が受け取ります(図1 家族信託の仕組み)。

 

家族信託による認知症・事業承継対策

 

家族信託は、会社経営など事業の承継にも活用可能です。自社株式の大半が経営者の所有となっている場合、経営者の判断能力が低下してしまうと議決権を行使できなくなります。つまり、経営者の高齢化に伴い、会社運営や方針決定など重要な決定ができなくなる可能性があるのです。そこで、株式を信託し、議決権行使を受託者の判断で行える仕組みを作っておくことで、万が一の事態に備えることができます。

 

また、経営に携わっていないご家族に株式が分散している場合、それぞれのご家族の保有する株式を一人の受託者に信託することで、議決権の集約を行い、経営における意思決定をスムーズにするという方法もあります。

 

社長Aさんの事例

創業社長であるAさんが経営する会社は、家族一丸となって事業を進め、業績は好調で、株価も上昇傾向にありました。しかし、相続税対策として、Aさんからご家族へ株式を暦年贈与してきたため、分散してしまった会社の議決権が問題となりました。A さんと奥様は70代後半と高齢のため、株式の凍結も心配です。そこで、議決権集約のための家族信託を行うことにしました。

 

家族信託による認知症対策と議決権の集約

例えば、株式を後継者に信託するということは、保有している議決権を後継者にすべて渡すことを意味します。しかし、Aさんとしては自身の認知症対策も必要ですが、まだ会社経営に携わり、徐々に後継者に決定権を渡していきたいと考えていました。

 

そこで、受託者として一般社団法人を設立し、理事・社員として、Aさんと奥様、長男と次男が就任することにしました。そして、株主であるご家族がそれぞれ委託者となって株式を信託し、会社の議決権をすべて受託者である一般社団法人に集約したのです(図2 Aさんの事例)。こうすることで、分散した議決権を集約でき、さらにAさんが元気なうちはAさん自身が中心となって経営し、認知症の発症などにより業務執行できない状態に陥ったときは後継者に議決権を譲るという条件付きの仕組みが出来上がりました。

また、配当金など会社から経済的利益を受け取る権利(受益権)は株主のもとに残るため、信託組成時に贈与税や譲渡所得税は発生しません。そのため、Aさんとそのご家族はまとまった資金を準備することなく、認知症対策と議決権の集約を実現することができました。

 

家族信託による認知症・事業承継対策

 

最後に

家族信託を認知症対策の手法と捉えたとき、個人であれば高齢期に入ってから検討を始める傾向にあります。しかし、経営に携わっている場合、万が一に備えて早めに対策をされる方も多くいらっしゃいます。家族信託を活用すれば、思い立った時に事業承継・認知症対策の仕組みを作ることができます(図3 株式を信託するメリット)。

ご家族みなさまの安心を守るため、事業承継対策のひとつとして、家族信託をぜひご検討ください。

 

家族信託による認知症・事業承継対策

 

 

記事:
トリニティ・テクノロジー株式会社
梶原 隆央 氏(司法書⼠)
https://sma-shin.com/ (外部サイト)

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