働き方改革時代の決算賞与活用術~利益還元と節税の効果~
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◆従業員のモチベーショ◆変わる働き方と企業に求められるもの
我が国は戦後以来、著しい高度成長を遂げ非常に豊かになりました。この時代の働き手はもっぱら親父。妻は専業主婦でした。会社では年功序列と終身雇用が約束され、豊富な若い力を活用してとにかくモノを作れば売れる時代でした。したがって、仕事をすればするほど利益はあがり、給料もあがる。車もカローラに始まり、いつかはクラウンと夢のある時代であったと思います。
かたや昨今では、働き手不足が深刻な問題です。少子化が進んでいますから、放っておけばこの状況はますます加速するのは自明ですね。これをカバーすべく、外国人労働者の受け入れや女性がより活躍できるシステムを、国を挙げて構築しようとしているのです。そんな社会では働き方も、高度成長期のような皆で残業するといったようなことではなく、「生産性」重視に変化していくことが強く求められています。
◆従業員のモチベーションアップのために
ところで、経営資源として「ヒト・モノ・カネ・情報」ということがいわれます。この中では、やはり一番最初に来る「ヒト=人材」は最も重要ではないでしょうか。「ヒト」にとって、何を拠り所に働くかはそれぞれですが、やはり給料に関しては大きな関心事でしょう。生活面のみでなく、成果をあげた、認められた証としても。会社は従業員の頑張りによって日々運営されています。これは、働き方が変わっても、基本的には変わることはないと思います。
そこで今回のテーマ、ボーナスです。それも決算賞与の効果についてお伝えしましょう。皆様の会社でも、決算賞与を毎年支給しているところは多いと思います。会社の業績は、ヒト、すなわち従業員の頑張りの成果と捉えると、その利益を還元することは、従業員のモチベーションを維持・向上させる効果が期待できますね。モチベーションが高ければ、皆で生産性の高い働き方を目指す環境にもしやすいかと思います。
◆決算賞与は決算月に支払わなくても節税できる
通常、ボーナスに関しては支払った日に損金(=経費と考えてください)になります。つまり、支払った日に経費になるわけです。(ただし、就業規則で支給予定日が定められているときは、その支給予定日に経費となります)
決算の翌期のボーナスで上乗せしても当然構わないのですが、できれば利益の出る決算期に経費にしたいですね。会社にとって節税になるからです。
例えば、3月決算の会社の場合、3月中に決算賞与としてボーナスを支払えば、その金額は今期の経費となります。
また、3月中に支払いができなくても今期の経費にできるルールもあります。要件は以下のようになります。
1.決算期内に、ボーナスの支給額を、各人別に、かつ、同時期に支給を受けるすべての従業員に対して通知していること。
2.通知をした金額を通知したすべての従業員に対し、その通知をした日の属する事業年度終了の日の翌日から1か月以内に支払っていること。
3.その支給額につき、通知した日の属する事業年度において損金経理していること。
3月決算の場合、3/31までに、その時点で在籍している従業員に、それぞれ支給額を通知します。そして1か月以内の4/30までに通知の通りの金額を支給します。
注意したいのは、3/31には在籍していた従業員が退職し、支給日の4/30に在籍していない場合です。4/30時点で在籍していない者に対しても通知通りの金額を支給しなければ要件は満たされません。
◆決算賞与支給のメリットと注意点のまとめ
以上のように、決算賞与を支給する効果としては…
● 従業員のモチベーション維持・向上の観点から
● 会社側では節税として
メリットがあると考えられます。
(勿論、将来を見据えた内部留保計画を無視しての賞与支給には注意すべきですが)
ただし、決算賞与をいくら支払うべきなのか、これが難しいのです。3月末までに利益がいくらになるのかわからないと判断できないからです。結局、この意思決定は「予測」に頼らざるを得ません。
おそらく月次で業績を管理している会社は、2月分までの11か月の業績に、3月分の業績の予測を加味して、支給額を決定されると思われます。そのためにはやはり、「月次管理」が欠かせませんので、そこは普段からしっかりと取り組んでおくことが大切です。
(役員は上記従業員には含まれません。ご注意ください。)
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(税理士法人ティグレパートナーズ東京 中村哲平)
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