福岡県みやま市で136年続く老舗「吉よしい開がのかまぼこ」は、後継者不在で廃業寸前に追い込まれていた。それを救ったのは、創業家出身者でもかまぼこ職人でもない大学生・林田茉優さんだった。林田さんは休業中の吉開社長と出会って再生支援に乗り出す。しかし、承継企業探しは難航。ようやく見つかった承継先との契約も、近隣住民との問題で白紙となってしまう。それでも「かまぼこを作りながら死にたい」と訴える3代目社長の言葉が林田さんを突き動かした。住民との対話、工場再稼働、そして思いもしなかった4代目社長就任。事業承継の新たな可能性を示した老舗店の復活物語を追った。現在、株式会社吉開のかまぼこ4代目社長として手腕を振るう林田茉優さん。しかし、もともと経営者を目指していたわけではない。福岡大学在学中に、中小企業の後継者問題と向き合う一人の学生であった。きっかけは「痛くない注射針」で知られる東京の町工場・岡野工業との出会い。世界が必要とする画期的技術を持ちながら、後継者不在を理由に廃業を決断したというニュースを見て、85歳の岡野雅行社長に会いに東京まで行く。そこで聞いた「技術の承継は一瞬ではできない。人を育てることができなかったことが悔しい」という言葉に衝撃を受けた。そこで林田さんは「後継ぎ問題の解決」をテーマに、大学の仲間たちとプロジェクトチームを立ち上げて活動を開始。まずは50社以上の中小企業経営者に会い、事業承継の実態をヒアリングした。その結果、想像以上に後継者の準備をしている企業が少ないことがわかった。「中小企業の社長さんは『生涯現役、死ぬまで仕事』という意識が強く、後継者のことまで考える余裕がない人が多い。でも、その準備不足が、気づいた時には後継者がいないという状況を生み出しているのです」と、林田さんは言う。活動を行う中で、ある税理士さんに紹介されたのが「吉開のかまぼこ」だった。明治23(1890)年創業、3代目社長の吉開喜代次さんは40年前に、リン酸塩や保存料などの添加物を一切使わない無添加製法のかまぼこを8年かけて開発し、農林水産大臣賞6回受賞、皇室献上といった輝かしい実績を持っていた。しかし、高齢と後継者不在により2018年6月から休業状態に。従業員も離れ、工場も止まり、廃業寸前に追い込まれていた。そこで翌年8月、大学4年生だった林田さんは早速アポを取って同社を訪問した。すると吉開さんは、「まさか、こんなにお客さんが待ってくれているとは思いませんでした。休業後も再開を求める電話や手紙がずっと寄せられているのです」と話してくれた。かまぼこ業界に1%もないといわれる無添加製法の価値、そして、その復活を求め続ける多くの顧客の存在に、林田さんは本物を感じた。「復活を手伝わせてください」。気づけばそう言って吉開さんの手を握っていた。すると吉開さんも、突然現れた大学生の熱意に押されたように、「ぜひお願いします」と言葉を返したのだった。そこから、往復3時間かけてみやま市へ通う日々が始まった。学生チームがまず取り組んだのは承継企業探しだった。福岡県内の食品会社60社以上に承継を提案したが、結果は惨敗だった。蘇らせたのは、縁もゆかりもない廃業寸前の老舗を“後継ぎ不在問題”と向き合った学生時代休業中の老舗かまぼこ店との運命の出会い承継企業が見つかるも新たな問題が発生2020年福岡大学経済学部卒業。学生時代に中小企業の後継者不在問題に興味を持ち、福岡の老舗かまぼこ店「吉開のかまぼこ」の復活に向けた支援活動を始める。卒業後、日本の技術・伝統を次世代へつなぐためCON株式会社を設立。2021年12月に3年間支援を続けた株式会社吉開のかまぼこ代表取締役に就任。日本の後継者問題解決のモデルを目指す。30株式会社吉開のかまぼこ代表取締役 林田 茉優さん24歳素人社長だった
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