社員発案の無料社員食堂で健康経営を実践黒字化を目標に掲げて予算を組み直し、「BMIが18・5~22・5」かつ「病欠ゼロ」のど元を過ぎれば人はすぐに傲慢になってしまう―。そんな戒めの気持ちを込めて近藤氏が社内で発しているフレーズが「指を自分に向ける」だ。「不満に感じていることを誰かのせいにしている人は、いつまでも自分事として捉えられないことに気づいたんです。私自身もまず自分ができているかを問うようにし、社員にもそれを求めています」。このメッセージを発するようになってから、他に不満のはけ口を求めていたような社員は自ずと会社を去っていき、課題を自分事として捉えられる自律した社員だけが残ってくれたことに気づいた。会宝産業の経営理念の一つに「私は生涯、楽しく会宝産業で働く」がある。その理念に応える形で、社員からの発案で10年前から健康経営を実践する取り組みがスタートした。健康診断の「要注意項目がゼロ」かつの“超健康”社員に対して、現金で3万6千円を支給している。また、健康度のレベルに応じて現金を支給する「元気手当」により、健康への意識が格段に高まった。さらに、社員食堂「会宝キッチン」では、社員の健康を守ることを目的に、体に良い食材を使った昼食を毎日無料で提供している。「社員一人ひとりが、会社のあるべき姿を自ら考え、行動できる集団こそ最強の組織」と近藤氏が言う理想の組織は着実に形になりつつある。した。「海外では日本車が50万キロ走行するのは当たり前なので、日本で10万キロ走った車のエンジンでも高い価値が付くのです」。先代の凄いところは、ビジネスの嗅覚だけではない。海外から検品のために単身で長期滞在するバイヤーたちを、家族のように温かくもてなしたのだ。そのような人間性が世界に広がるネットワークにつながった。2015年、2代目として社長を継いだ近藤氏にとって最大の危機はコロナ禍に訪れた。ロックダウンに見舞われたことで輸出が激減。2020年5月時点で4500万円の赤字を抱えた。今期は赤字もやむを得ないとあきらめていたが、会長に呼び出され、「こんな大変な時だからこそ黒字化しなさい」と言われ、二つ返事で「はい」と答えていた。翌朝会長のもとへ行き、「会長と私の役員報酬を半分にします」と直談判したところ「ぜひ」と応じてくれた。他の役員についても報酬をカットしたが、社員の給料は「聖域」として守り抜いた。全社員の前で「絶対に黒字化を達成する」と宣言。コロナ禍に入ってからは、社員全員で経営の教科書を1章ずつ読み、自分の現場で何ができるかを考える勉強会を続けていたこともあり、その言葉は社員に響いた。それまでは「在庫がない」と断っていた部品についても徹底的に探し回るようになった。結果として、最終的には3700万円の黒字を達成。目標を上回った利益の半分を決算賞与として社員に還元することができた。現在、会宝産業が扱う廃車のリサイクル率は90%を超える。今後はこの経営モデルを各国のパートナーとともに海外へ展開しようと考えている。「私たちが培ってきた解体と経営のノウハウを世界へ伝え、雇用を生み出し、真の資源循環を世界規模で達成したい」。会宝産業が目指す『あとしまつの責任』の完成形に向けた挑戦はこれからも続いていく。 社員に無料でランチが提供される「会宝キッチン」輸出を待つエンジン部品会宝産業株式会社代表取締役社長近藤 高行 (こんどう たかゆき)1974年、石川県金沢市生まれ。金沢工業高等専門学校(現:国際高等専門学校)を卒業後、アメリカ留学を経て1996年に会宝産業入社。2015年に代表取締役社長就任 。29
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