役員退職金は、毎月の役員報酬とは異なり、「退職所得」として課税されます。これが、受け取る側にとってなかなか有利な仕組みになっています。まず、在任年数に応じた「退職所得控除」が差し引かれます。例えば20年勤続であれば800万円、30年であれば1500万円が控除されるため、長く貢献した役員ほど控除額も大きくなります。さらに、控除後の金額をさらに2分の1にしてから課税される仕組みのため(※一定の条件あり)、同じ金額を給与で受け取る場合と比べて、所得税・住民税の負担が大幅に軽くなります。加えて、退職金には社会保険料もかかりません。会社にとっては損金、受け取る側には税メリット。役員退職金が「双方にとって合理的な出口」と言われる理由が、ここにあります。ただし、報酬と退職金のバランスは会社の状況や個人の事情によって異なります。具体的な設計は、税理士などの専門家に相談されることをお勧めします。社長から会長への就任など、役割の変更(分掌変更)に合わせて退職金を出す際は、肩書きだけでなく「経営権を後継者に譲ったか」という実態が問われます。後から「退職金と認められない」事態を避けるためにも、仕事の分担を明確にし、「誰が見ても権限が移った」と説明できる準備が大切です。具体的には、決裁ルールを決め直したり、役職変更を記した株主総会や取締役会議事録を正しく保管しておくことが有効な備えとなります。いのは、役員の退職金は、従業員向けの就業規則とは別に「役員専用の規程」が必要になるという点です。「規程」といっても、中小企業では大げさな書類である必要はありません。大切なのは、「どのような基準で、いくら支払うか」という根拠が明文化され、社内でルール化されていることです。たとえシンプルな内容であっても、事前に株主総会などで承認を得ておくことで、退職金の妥当性を支える立派な備えとなります。算出された金額に対し、実際に資金をどう手当てするかも重要なテーマです。勇退の時期を逆算し、退職金準備向けの小規模企業共済などを活用して、計画的に積み立てておくこともひとつの方法です。引退後の安定した生活や、円滑な事業承継のために、まずは自社の規程の有無を確認し、現状の「適正額」を試算することから始めてみませんか。コラム①コラム②退職金と税─受け取る側の有利な仕組み社長から会長へ。役割が変わる時の留意点 計計画画的的なな資資金金準準備備ををティグレニュース11TIGRE NEWS
元のページ ../index.html#11