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夫婦別姓をめぐる議論と今後の展望世界で夫婦同姓を義務付けている国は日本だけです。国連の女性差別撤廃委員会からも、選択的夫婦別姓制度の導入を求める勧告が過去に4回も出されていますが、日本政府の対応は依然として鈍いままです。選択的夫婦別姓制度への反対意見にはどのようなものがありますか?よく聞かれるのは「日本の伝統的価値観が壊れる」という意見です。しかし、先に述べたように、夫婦同姓は日本の伝統と言うには、歴史が浅すぎると言えるでしょう。また、「親子で姓が異なると家族の一体感が損なわれる」という意見も多く聞かれます。しかし、他の国は夫婦別姓が一般的ですし、そもそも現在の日本でも約3分の1の夫婦が離婚しています。未成年の子がいる場合、母親が親権を持つケースが多く、旧姓に戻ると、子も姓を変更しなければならないことがあります。特に就学児の場合、進学時や進級時に合わせるといった配慮が必要になります。もし夫婦別姓が選べるのであれば、子どもの姓は親のどちらかの姓でしかなく、親の離婚で子どもの姓は変わらないし、母親の再婚によっても変わりません。夫婦同姓論者は子どものこと、家族の一体感を強い根拠としていますが、私が強調したいのは、今やいわゆる熟年離婚が増え、中高年の結婚・再婚も増えていて、その際には子供のことを考える必要がなく、むしろこれまでの互いの人生や家族のことを考えると姓を変える必要がないことこそが望ましいということです。多様性の社会なのですから皆のニーズを考えるべきです。選択的夫婦別姓制度の導入が今国会でも議論され始めていますが、今後の見通しはどうでしょう?経団連は昨年6月、選択的夫婦別姓制度の導入を求める提言を発表し、現行の同姓制度が女性に不利益をもたらしているとして、早急な法改正を求めました。石破さんも昨年秋の自民党総裁選までは、別姓制度の導入に前向きな発言をしていましたが、首相就任後は党内の反対派の影響を受けて発言のトーンが弱まっています。しかし、現在の国会は自民党が少数派であるため、推進派の公明党や立憲民主党を中心に、導入に向けた法案づくりが進む可能性があります。世論調査でも、選択的夫婦別姓制度に賛成する意見が過半数を超えており、社会的な支持も高まっていると言えるでしょう。これは国民全体の問題であるという認識を持ち、国会の議論を注視しながら、実現に向けて気運を高めていくことが重要だと思います。夫婦のどちらかが必ず同じ姓を名乗る必要があり、選択の自由が制限される。の負担がかかることが多い。ドなどの名義変更手続きが必要。長年使ってきた姓を変更することで、自己同一性(アイデンティティ)を喪失する可能性がある。離婚した際に旧姓に戻すことも今の姓を続けることもできるが、再婚の際再び姓を変更することになり(この離婚の際は旧姓に戻れない)、また子どもにも同様の問題がある。世界的に夫婦同姓を強制する国は日本だけで、国連からも法改正の勧告を4回受けている。別姓を希望する夫婦は事実婚を選ばざるを得ないため、法律上の不利益を被る可能性がある。問題点個人の選択の 自由制限女性への負担夫の姓を選ぶケースが95%であり、女性側に改姓手続きの煩雑さ銀行口座・運転免許証・パスポート・クレジットカーアイデンティティの喪失離婚時の不都合国際的な流れとのギャップ事実婚の不利益内容佐々木知子法律事務所弁護士・元参議院議員佐々木 知子 (ささき ともこ)1955年広島県生まれ。神戸大学法学部卒業後司法試験合格。1983年東京地方検察庁検事に任官し、その後、アジア極東犯罪防止研修所教官、法務総合研究所室長研究官、東京地方検察庁室長検事などを歴任。1998年参議院議員選挙(自民党比例区)に当選し、1期6年間の在任中に選択的夫婦別姓制度の導入を推進した。2004年より弁護士として活動を開始し、2005年から帝京大学法学部教授を兼任。少年法をはじめとする非行問題、教育問題、国家観などをテーマに講演も多数行っている。日本の夫婦同姓制度のおもな問題点33

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