現代社会では、仕事や人間関係、生活環境の変化など、さまざまなストレスが私たちのこころに影響を与えています。「うつ病」は多くの人が経験しうるこころの病気の一つです。「うつ病」によって生じてくるさまざまなサインを知り、早期発見と適切な治療につなげましょう。第23回うつ病「うつ病」はうつ状態を引き起こす代表的な精神疾患の一つです。うつ病は、アメリカ精神医学会(APA)が作成した精神疾患の診断基準であるDSM−5や、世界保健機関(WHO)が定めた国際的な疾病分類であるICD−10の基準(次ページ参照)に基づき、医師が患者の症状や経過を詳しく聞いて診断します。うつ病の原因はいまだ解明されていませんが、脳内で情報伝達を担う神経伝達物質であるセロトニンやノルアドレナリンの減少や脳内で炎症が起きている可能性などが推測されています。遺伝的要因、死別や離婚など喪失体験のような心理的ストレスとなるライフイベント(昇進など一見喜ばしいことも)、身体的要因(過労、身体疾患やその治療薬、アルコールなど)といった複数の要因が関与して発症すると考えられています。うつ病治療の基本は「休養」と「薬物療法」です。まずは患者と家族に疾病についての知識を提供し、場合によっては仕事を休むなどして精神的休養を取れるよう治療環境を整えることが重要です。通常、抗うつ薬と分類される薬剤を中心にして薬物療法が進められます。抗うつ薬が効果を発揮するまでには10日~2週間程の時間が必要です。服薬開始時には副作用として吐き気など胃腸症状が出やすいものの、1~2週間で胃腸が慣れて軽減~消失することも多く、少量からゆっくりと増量することや一般的な吐き気止めなどでの対処も可能です。我慢せず、率直に主治医へご相談ください。寛解(症状がすっかりなくなった状態)へ回復する前での治療中断はうつ状態の悪化を招きます。いったん始めた治療は寛解に至るまで根気よく続けることが大切です。昨今、うつ病は誰もが向き合う可能性のある病気であることが広く知られてきました。そのため精神科・心療内科を標榜する医療機関は増えましたが、受診先がなかなか見つからないという声も多く聞かれます。メンタルヘルス領域では問診が診療の基本であり、その時間を確保するために予約制を取る医療機関が少なくありません。初診時には少なくとも30分程の時間を確保するため予約が取りづらくなっています。予約日までは可能な限り休養を優先しながら、無理なく過ごしましょう。うつ病をはじめとした精神疾患の治療では長期の通院が必要となることも多く、時間的、経済的な負担も少なくありません。そこで活用したいのが「自立支援医療制度」です。この制度は精神疾患がある人が通院治療を続ける際、医療費の自己負担分が1割に軽減されるもので、医師の意見書を添えて自治体へ申請することにより利用できます。診断や収入状況に応じて負担上限額が設定される場合もあり、経済的負担が軽減されるかもしれません。うつ病の回復には周囲の理解も必要です。本人に寄り添い、強く励ましたり、早急な回復を求めたりしないで、静かに見守る姿勢を持ちましょう。(埼玉県狭山市)20健健康康相相談談室室 関口 隆一先生新狭山かえでクリニック長期的なケアが必要です。長期的なケアが必要です。根気よく治療を続けましょう。根気よく治療を続けましょう。
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