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9 ―御手洗会長は、日本経済が停滞している現状をどのようにとらえていますか。また、その現状を解決していくためには、官民でどのような改革が必要だとお考えでしょうか。―日本企業は新技術を生み出すのは得意だが、それを応用した製品作りは苦手と言われます。しかしキヤノンでは、先端技術を開発しながらそれを応用して次々と新製品を市場に送り出してきました。なぜそれができたのかを教えてください。―御手洗会長は、今後成長が期待できる事業分野として、医療やウェルビーイングにも着目されていると聞いていますが、その理由は何でしょうか。また、ほかにも着目している成長分野があれば教えてください。ウェルビーイングや医療、化学分野などの成長に期待ションを喚起していくことや、環境問題をはじめとした地球的規模の課題解決へ貢献することも重要です。さらに言えば、現在非常に緊張感の高まっている米中間の関係を良好なものにしていくための調整役をすることも、日本だからこそできる重要な役割だと思います。ぜひ、日本が世界の中でリーダーシップを発揮することを期待したいと思います。「失われた30年」といわれる日本経済の停滞はイノベーションの欠如が大きな原因のひとつです。確かに2020年以降は円安・ドル高もあり、その復調も見えてきましたが、本格的な復活とは言い難い状況です。特に、AIやバイオテクノロジー、半導体、先端コンピューティング技術、宇宙開発など、先端技術の開発では遅れを取っています。こういった分野に官民を挙げて思い切った投資をし、新しい産業づくりを目指す必要があります。人口減少に直面する中で持続的な成長を実現するには、潜在成長力を高めていくことが欠かせません。また、民間企業の活力を生むための規制緩和を進めるとともに、さまざまな政策実現に向け、官民双方の知恵を結集させる必要もあります。医療や農業をはじめ、規制緩和によりさらなる効率化と成長を実現できる分野はたくさんあります。行政改革も必要でしょう。人口減少下においても、首都圏への一極集中がさらに進み、地方が衰退している現状では、地方の創意工夫と活力を促す道州制の導入を目指すべきだと思います。日本は狭い国土を狭く使っています。道州制によって、米国の州のように自主性を持たせ、徴税権も持たせることで、道州を「経営」してもらうようになれば、地域ごとの強みを生かした産業の育成や企業誘致も図れるようになるでしょう。また、道州制は大学改革にもつながるものと思います。日本の国公立大学を再編・統合し、効率的な運営をすれば、世界に冠たる大学を育てられますし、世界の俊英を集め、有用な人材の育成にもつながります。行政改革の一環としては、電子政府の実現も進めるべきです。以前に比べれば電子化も進んでいますが、いまだ紙による事務処理が多いのも現実です。電子政府を加速させることで、行政の効率化とコスト削減を進め、国民の利便性の向上を一刻も早く実現すべきだと思います。経営は常に成長力を保持しておくことが必要です。「新しい技術を生み出し、その技術が成長力のある新しい産業を創出していく」という流れに沿って経営をしていくことが極めて重要です。当社の祖業はカメラ事業ですが、1930年代当時の日本は資源も乏しくカメラは貴重な輸出品でもあり、最先端の技術が使われていました。その後、高度成長期に事務の合理化が叫ばれる中で複写機を手掛けて成長してきました。一方、企業とは「投下資本の拡大再生産の機関」であるとも言えます。従って個々の企業はその拡大再生産を自らが得意とする分野で行うことが最も合理的です。当社の核となる技術は、光学技術、画像生成技術、印刷技術です。この分野には知見もあり、豊富な人材もいます。従って、時代の要請を見極めつつ、その資産を十二分に使いながら、商業印刷、メディカル機器、ネットワークカメラ、産業機器と事業を拡げ成長力を維持し続けてきました。いずれの分野も産業としての持続性があり、マーケットが広く、現在の経営リソースを活用できるものだということです。ウェルビーイングとは身体的、精神的、社会的に良好で、すべてが満たされる状態ですが、人生100年時代を迎え、最も重要となるのが健康寿命です。単に長生きをすれば良いということではなく、いかに心身ともに健康でいられるかが大新春特別インタビュー ❶

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