Plusone644
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―米国では大統領が交代し、欧州や中東、アジアでも政治経済の不透明性が高まっています。このような国際情勢下で日本が果たすべき役割は何だとお考えですか。 8国際情勢が混迷を深める中、これからの日本が果たすべき役割とは何か。新春にあたり、キヤノン株式会社・御手洗冨士夫会長に、日本企業の展望と成長のヒントについて伺いました。2025年、日本企業の進むべき道と可能性を聞く新春特別インタビュー❶1989年のベルリンの壁崩壊以降、自由主義経済・市場経済が世界中に広まりました。この流れを受けて、EU、NAFTA(北米自由貿易協定)、APEC(アジア太平洋経済協力)といったブロック的な経済圏が立ち上がり、1990年代末ごろまでには各々が交流を始め、その結果、人・モノ・金はもちろん、石油や天然ガスなどの資源を含めたさまざまな経営資源が時間と距離の壁を越えて行き来し、「価値の交換」が進みました。そしてその結果、世界中が豊かになったわけです。しかしながら2008年のリーマンショックを契機に、世界経済はマイナス成長を経て低成長時代を迎え、例えば欧州ではイギリスがEUから離脱するなど、グローバリゼーションが衰退してしまいました。その混乱の状況下で、ロシア・ウクライナ紛争に代表されるように、「経済の分断」に加え「政治の分断」までもが表層化し、各国による保護主義・自国ファースト主義が台頭してきました。特にトランプ氏が米国大統領に就任し、このままアメリカ第一主義を掲げ、超保護主義政策を進めれば、世界は決定的に分断されるでしょうし、関税政策を武器に政治を進めればアメリカ自体も衰退しかねません。今、大切なことは一刻も早く戦争を終結させることです。その上で、国連の枠組みを強固にすることを中心に、グローバリゼーションを再構築することが肝要です。新しい世界秩序を作ることは幾多の困難を伴いますし時間もかかります。しかしながら世界情勢をこのまま放置すれば、ますます国家間の格差は広がり分断が加速します。歴史を振り返るまでもなく過去の戦争は格差が引き起こしたものであることを今一度認識するべきでしょう。このような国際情勢下で日本が果たすべき役割は多いと思います。日本には自由主義経済がしっかり根付いています。従って新しい世界秩序の構築に向けて、まずはアジア地域の旗手として近隣諸国との秩序ある貿易をベースに、この地域でのリーダーたる活動をすべきです。また、日本の持つさまざまな技術を使いイノベー1935年大分県生まれ。58年中央大学法学部卒業。同年キヤノン株式会社に入社。95年代表取締役社長に就任。事業の多角化と技術革新を進め、同社を世界トップクラスの電気機器メーカーへと成長させた。2006年代表取締役会長就任。同年より日本経済団体連合会会長も務め(〜2010年)日本の産業界全体の発展に寄与し、リーダーとしての卓越したビジョンと戦略で国内外から高い評価を得ている。現在も「三自の精神」を軸に企業経営と人材育成に情熱を注いでいる。キヤノン株式会社代表取締役会長兼社長CEO御手洗 冨士夫 氏

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