Plusone644
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常に前向きに、明るくるまった。だが事業は縮小せざるを得なかった。「僕は外、かみさんには中の仕事を任せ二人三脚でやってきたのでどちらが欠けても成り立たないんです」。積極的に参加していた病院への精肉卸の入札には参加せず、飲食店との取引についても断りを入れた。「家を売ることも考えましたが、子どものためにもそこは守りたかった。肉の事業をすべて畳んで再就職することも考えました」そこへ光明が差した。がん保険で大きなお金が下りてくることが分かったのだ。「がん家系でもないし50過ぎたしもうやめようかと思っていた矢先のことでした」としのぶさん。政夫さんの生命保険についても、しのぶさんのがんが発覚する半年前にたまたま切り替えの時期を迎え、しのぶさんのがん保険を付帯で追加したところだった。「どこでどう転ぶか人生はわからないものです」。政夫さんはしみじみ言う。事業は縮小したが、2人で細々ながら続けていくことを話し合った。ある時、古くからの知り合いが勤める肉屋が倒産の危機にあると聞き、彼を自社で雇用することにした。その矢先にコロナ禍が直撃する。「社員が増えたところに仕事がなくなって」また途方に暮れた。だが「捨てる神あれば拾う「しっかりと中を守ってくれるから神あり」とはよく言ったものだ。取引先の高級中華饅頭店が饅頭のセットを売り始めたところ、これが大ヒット。居酒屋の売上減少を補ってくれた。しかも、コロナの給付金もあり、かろうじて苦境をしのぐことができた。店の休業中にできた時間を生かし、惣菜加工の免許を取り、ビーフシチューや煮込みハンバーグなどのテイクアウト用商品を開発した。政夫さんがSNSでそうした取り組みを発信するとなじみのお客さんが買いに来てくれ、広めてくれた。さらにここ数年ほどは政夫さんの幼なじみ、地域の消防団の仲間、同業者などがお客さんを連れてくるようになり、コロナ以前よりも店ににぎわいが増しているという。「マスター(政夫さん)のトークが楽しみでやってくる人も多いんです」としのぶさん。のびのびやっていられる」と政夫さん。薬の副作用と今も闘うしのぶさんだがこのほど自身の半生をまとめた本を出版することが決まった。「乳がんで入院している時に自分のこれまでのこと、その時に考えたことを書きためていたんです。大変な時もあるけど笑って前を向いて歩いていこうというメッセージを伝えたい」としのぶさん。今年、来年で2人とも還暦を迎える。「これからは気負わず、無理せず、体をいたわりながら仕事をしたい。面白い60代になりそうですね」と政夫さん。苦難を乗り越えながら常に前向きに歩んできたからこそたどり着いた新境地だ。株式会社MRKコーポレーション(肉創作料理・濱放者)右上から時計回りに「濱モツ鍋」「ハマホルバーガー」「ローストビーフの握り寿司」「トマホーク」。「トマホーク」は要予約。29政夫さんとの会話を楽しみに訪れる客も多い事業内容/飲食業〒231-0057神奈川県横浜市中区曙町2-23-1ASK秋田ビル2FTEL : 070-6637-2983

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