Plusone644
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          ―がんの治療法といえば、おもに薬物、手術、放射線ですが、それぞれどのような進歩が見られますか。―薬物治療で注目されている最新動向を教えてください。―最近「個別化医療」が増えていると聞きますが、どのような治療法ですか。―放射線治療の最新動向について教えてください。―近い将来、期待されているがん治療法について教えてください。注目すべき最新治療薬と放射線技術期待される将来の治療法とはくく、薬も効かないことが多いので、治療が難しいのです。「肺がん」の死亡者数は今1位ですが、23年に初めて減少しました。種類も変わってきています。喫煙率の減少により、タバコの影響が大きい「小細胞がん」と「扁平上皮がん」はだいぶ減ってきて、喫煙とあまり関連性のない「肺腺がん」の死亡者数が増えています。がん治療の薬は、以前は「殺細胞性抗がん剤」だけだったのですが、今ではそれ以外に「分子標的薬」や「免疫チェックポイント阻害薬」が出てきたりして、薬の種類はすごく増えています。手術に関しては、「肺がん」などの場合、以前なら胸を大きく切り開く開胸手術が主流でしたが、今は「ダヴィンチ」などの手術支援ロボットや胸腔鏡を使うことで、「傷口が小さく、痛みが少ない」「術後の回復が早い」など、開胸手術に比べてたくさんのメリットがあります。放射線治療も、以前は単純写真に線を描いて、そこに放射線をかけるやり方でしたが、今はコンピュータを使って精密に照射できるようになっているし、陽子線や重粒子線を用いた治療も増えるなど格段に進歩しています。昔から使われている「シスプラチン」のような抗がん剤は副作用が強いのですが、今は副作用をコントロールする薬が出てきています。また、抗がん剤の質も変わってきていて、分子標的薬(がん細胞などの特定の分子を狙い撃ちする薬剤)は基本的に殺細胞性の抗がん剤より副作用が軽いです。それでも皮膚障害が出ることもありますが、副作用が軽くなったという言い方はできるかもしれません。「オプジーボ」などの免疫チェックポイント阻害薬は、7割くらいの人にはほとんど副作用が出ませんが、残り3割の人には副作用が出るので、コントロールする技術が必要で、その技術も進歩してきています。わかりやすい例でいうと、例えば、「肺がん」の中でいちばん多いのは「肺腺がん」ですが、その原因となる遺伝子がわかっている人が3分の2くらいいて、何らかの遺伝子異常があります。その遺伝子異常のタイプによって、それぞれに対応する薬がいくつかあり、一人ひとり使う薬を変えるのです。一概には言えませんが、かなりの確率で効く薬があるのは確かです。精密な照射が可能になったことで副作用が軽減されるようになり、今まで放射線をかけられなかった人にも治療ができるようになりました。従来は、放射線によってがん細胞だけでなく正常な部分も障害され、場合によってはそれで命に関わる副作用も出ていました。例えば、肺がん治療で肺に放射線をかける影響で肺に障害を起こす「放射線肺臓炎」などで、それが命取りになる患者さんが100人中1人くらいいたのですが、今では放射線を精密に当てる技術の進歩により、治療できる患者さんの範囲も広がっています。例えば、ADC(抗体薬物複合体)という、抗体に抗がん剤を結合させた医薬品が、がん細胞を標的とした治療薬として注目されています。私が学生の頃から、いわゆる「ミサイル療法」と言われる、抗体に抗がん剤をくっつけてがんを狙い撃ちにするという発想はありましたが、ここ数年、それが現実となって、ADCというカテゴリーに分類されるいろいろな薬が開発され、今後どんどん増えてくると思います。殺細胞性の昔ながらの抗がん剤はもう開発されていません。抗がん剤ではなく、今言ったように抗体をくっつけるADCになってきています。薬の中身も大きく変わってきているのです。12

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