―御手洗会長は、人の力を活かすには「自発」「自治」「自覚」の「三自の精神」が大切で、その中でも「自発」が最も重要とおっしゃっています。「自発」を引き出すための人材育成のポイントについてお聞かせください。―年頭にあたり、これからの企業経営で御手洗会長が大切だと感じていることについて教えてください。また、中小企業の経営者が「元気と自信を持てる言葉」をいただければありがたいです。経営者に大切なことは「使命感」を持つこと切なわけです。日本だけを見れば少子高齢化は加速度的に進んでいますが、世界レベルでは人口は増え続け、医療に対する要請も大きくなっています。コロナを例に挙げるまでもなく、人口増加に伴って未知の病気が出現することも想定されます。治療分野だけではなく、未病や健康維持にまで視野を広げれば、医療分野は重要な社会的課題であると同時に、産業としても成長の可能性が大きいと考えています。技術の進歩が加速度的に進んでいる現在、なかなか先を見通すことは難しいですが、あえて言えば、当社は光学技術や印刷技術に加え、化学技術にも知見があります。この分野での人材、技術、知見を活かすことを念頭に置けば、例えば化学分野は成長性が高く、今後注目している分野のひとつです。「強い組織」を作るためには「強い個人」が必要です。当社の行動指針の原点は創業期から受け継がれる「自発」「自治」「自覚」の「三自の精神」です。いずれも大切ですが、企業においては一人ひとりが当事者意識を持って仕事に取り組むことが肝要であり、だからこそ「自発」は重要だと考えています。当社では終身雇用を掲げ、人を大切にすることを重視してきました。一方で終身雇用が甘えの構造を生み出さないよう、人事制度は「実力主義」がベースです。つまり、安心して仕事に取り組める環境と、公平・公正に基づく実力主義ベースの制度を併存させることで、常に社員同士が切磋琢磨し、自主性を引き出す風土を醸成しています。また、認定制度や表彰制度も充実させ、個々人の自主性を引き出す取り組みをしていますし、発明表彰、品質表彰、コスト革新表彰など、チームで自発的に取り組むことでモチベーションを引き上げる仕組みも導入しています。同時に社内教育の充実を図り、社員の可能性を広げることで人材育成を図っています。企業経営は合理的であることが最も重要です。世界には、自由主義がベースの国もあれば社会主義国もあります。また、宗教がその国を律している国もあるわけです。日本は島国であり、その多くが日本人で構成され、日本語を話すという世界的には特殊な国です。そのような中で、日本企業は長らく日本の文化や風習・慣習に合った経営をしてきましたし、それが最も合理的なわけです。財務や会計、あるいは商品はインターナショナルな考え方をベースにすべきですが、人事はその国の文化や習慣、国民性に合った経営をするのが一番合理的です。例えば終身雇用では、「愛社精神」という文化的なコーポレートガバナンスが醸成されやすく、また社員教育をしやすいし、それが蓄積していきます。長年にわたりそういった経営を続けてきたことが、人材の厚みとなり、その人材の豊富さが日本の最大の強みだと思います。また、日本人の勤勉さ、モノを大切にするという価値観、企業の社会的責任感の強さや消費者満足を重視する姿勢も日本人の強みであり、研究開発力の高さ、高品質の商品を生み出す技術力などは世界でも有数の力を持っています。一方で、過度な縦割り主義、陳腐化して現状に合わない様々な規制、世界市場への展望の不足に加え、昨今では最先端技術の開発力が弱くなっていることも課題で、これらを克服していかなければなりません。経営者に大切なことは「使命感」を持つことです。規模の大小を問わずトップは厳しい判断をしなければならない時が必ずあります。弱気に流れそうな自分に打ち克つ力が経営には問われますが、その時に大切なことは「使命感」をどれだけしっかり持っているかです。また、経営者には「目標設定力」とそれを推進するための「説得力」も必要です。日本企業の99%は中小企業であり、日本はそれらの企業に支えられていると言っても過言ではありません。また、ロボット、半導体、医療、サービスなどの分野をはじめ、日本の中小企業は世界有数の技術やサービスを数多く持っていますし、オンリーワンの技術もたくさんあります。この技術と優秀な人材を掛け合わせ、さらなる飛躍を遂げることが日本の発展に必ず結びつくと思いますし、停滞したぜひ、日本の中小企業の今後の活躍に期待したいと思います。10新春特別インタビュー ❶30年を打ち破る原動力になるはずです。
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