香川県高松市の沖合約20kmに位置する小豆島は、瀬戸内海では淡路島に次ぐ面積を誇る。温暖な気候を生かし、江戸時代から塩づくりが盛んな土地であったが、それに加えて、海上交通の要衝として大豆や小麦の集散地でもあったことから醤油産業の隆盛へとつながる。さらに、その醤油で地の食材を炊き込んだ佃煮も名産品として定着していった。宝食品もそうした佃煮製造を行う会社の一つとして1948年に創業。海苔、昆布、きくらげなどの佃煮を中心とする食品メーカーとして成長を遂げた。だが、ここ20年ほどは、佃煮だけに頼らない商品開発に挑み続けている。「離島ならではの流通の課題として、冷蔵、冷凍配送が弱かった」と三澤省一社長。そこで、常温保存できる商品をと2004年に開発したのがレトルト食品の「炊き込みご飯の素」だ。同社の商品はできるだけ保存料や添加物を使わずに製造しているためレトルトとの相性が良く、工場ではそのために必要な窒素注入ラインや殺菌装置を整え、カレーなどもラインナップに加えていった。2012年には宇宙食への挑戦が始まった。宇宙飛行士が宇宙でも日本食を楽しめるようにと宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発企業を募った説明会に参加したのが事の発端だ。3種類の佃煮商品を持ち込んだ中で、JAXAから選ばれたのは、瀬戸内海産ちりめんじゃこと国産山椒を醤油で炊いた「ちりめん山椒」だった。「無重力下では骨密度が落ちてしまうので、ちりめんじゃこでカルシウムを補おうという判断だったようです」。だが、認証を受けるには厳しい衛生管理基準のハードルを乗り越えなければならない。海や自然に囲まれた工場につきものの、工場内への虫の侵入という課題について、JAXAの厳しい基準をクリアできずに何度も跳ね返されたが、衛生管理に精通した若手社員が根気よく難題をクリアし、最後はJAXAの担当職員から虫について質問さ 佃煮から宇宙食まで 若い世代の力で、食の未来を提案Plusプラスレトルト食品から始まった新分野への挑戦厳しい衛生管理基準を乗り越え宇宙へ宝食品株式会社代表取締役社長 三澤省一さん「夢ひと企業プラス」は、ティグレ会員様の魅力的な事業やサービスを紹介していく「夢ひと企業」の特別コーナーです。今回は、小豆島に本社を置く宝食品株式会社の三澤社長にお話を伺いました。28P
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