400年続いてきた居酒屋文化は決して廃れない価格を上げ、賃金を上げ、お金が回る好循環を作る橘 受けましたが、当時どのような心境で状況を受け止めていましたか。同業者の間でもコロナ禍後に居酒屋市場は縮小していくのではないかと不安視する声が多かったのですが、私はそうは思いませんでした。居酒屋は江戸時代から400年続く業態であり、コミュニケーションを図る場として連綿と受け継がれてきた文化です。コロナ禍が収束すればまた求められるようになるという確信は持っていました。ただ、今後も感染症は一定のサイクルで流行すると考えると、アルコール類を提供する業態だけでは基盤が脆ぜ弱であり、アルコール類を提供しない業態の店も作っていかなければと考え、2021年8月に国産チキンバーガー専1号店を出しました。橘 方で、従業員には100%給料を保証すると伝えたそうですね。態宣言が発出された時に、すぐに臨時の取締役会を開いて、何より人命が第一との考え大倉 大倉 いじゃくコロナ禍で飲食業界は大きな打撃を感染が広がった当初しばらくは、門店「TORIKIBURGER」の感染拡大当初いち早く休業された一2020年4月に政府から緊急事から休業を決めました。従業員の皆さんは自宅待機状態で不安だったと思うので、同時に給料は100%保証すると伝えました。ただ、2~3か月もすれば収束すると思っていたのがあれほど長引くとは思っておらず、それは誤算でした。このままではまずいことになるという思いも頭をよぎりましたが、国が翌年から特例措置を拡大してくれたことで何とか生き延びられる目処が立ち、ようやくそこからアフターコロナに向けた戦略を練ることができるようになりました。橘 現在、飲食業界にとっては、人手不足が大きな課題となっています。人手不足は今後ますます厳しくなっていくことは間違いありません。働きたいと思ってもらえない会社は淘とた汰されていくでしょう。そこで大事にすべきことは、働きやすさと働きがいを従業員に提供することです。働きやすさについては、報酬も含めたお金と働く環境の両面での改善が欠かせません。実は、私は数年前まで、オフィス空間はお店のように利益を生み出す場ではないからできるだけお金をかけずにいたのですが、考えを改めました。オフィスにいる本社部門からの支援があってこそ、お店も利益が出せるわけですから。そこで従業員がワクワクしながら働ける環境が必要だと考え、2024年7月に大倉 御堂筋の本町に新しく完成したビルに本社オフィスを移すことにしました。好きな場所で働けるフリーアドレス制にし、私自身も大部屋にデスクを置いて、だれもが「報連相」しやすい環境を作っています。橘 飲食業界のもう一つの大きな課題が仕入れコストのアップです。鳥貴族様は5月からメニューの全品均一価格を360円から370円へと値上げされましたが、その狙いは何でしょうか。創業後、均一価格となってから今回で5回目の値上げとなります。創業期から280円均一でずっとやってきたので、2017年に約30年ぶりに298円へ値上げした時にはだいぶ勇気がいりました。ただ、コロナ禍になる前から海外進出に向けた調査で、世界各都市に視察に出かけるたびに、日本は価格も賃金も安いと感じ、世界の水準に追い付いていかなければ失われた30年がまた40年に延びてしまうのではと危惧しました。弊社では、コロナ禍前から外国人のアルバイト・パートを4千人ほど雇用してきたのですが、このままでは日本で働いてもらえなくなるという危機感を持っています。価格を上げ、賃金を上げ、お金が回る好循環を作っていくという意識がここにきてだいぶ浸透しつつあり、値上げについてもお客様大倉 5う
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