「認知症」とは、何らかの原因で脳の機能が低下し、日常生活に支障が出る状態を指します。その要因は100種類以上にも上りますが、約70%がアルツハイマー型認知症と言われています。最近の研究では、有効な治療法や予防法が徐々に明らかになってきています。認知症の前にはMCIの状態が5年あると言われており、この期間に治療をスタートさせることが重要です。理想的には、SCIの段階で治療を始めると病気の進行をかなり遅らせることができます。アルツハイマー型認知症の治療は近年飛躍的に進展しており、「レケンビ(一般名レカネマブ)」という薬が注目を集めています。レケンビは、MCIの患者を中心に、アミロイドβを除去し認知機能の低下を遅らせる効果が期待できる画期的な新薬です。通院を伴う点滴治療とMRIによる経過観察が必要なことから、専門医療機関のみ取り扱うことができます。アミロイドβは生まれたばかりの赤ちゃんでも発生していますが、認知第19回アルツハイマー型認知症pairment ( 日本は世界的に見ても認知症患者の割合が高い国の一つです。人口1000人当たりの認知症患者数はOECD加盟国の中で最も多く、これは、脳の神経伝達物質であるセロトニンが関与していることが報告されています。セロトニンは精神の安定に重要ですが、日本人はセロトニンがうまく働きにくい遺伝子を持っているため、“遺伝的に心配性な国民”とも言えます。(図1)アルツハイマー型認知症は、脳の神経細胞が退廃した老廃物「アミロイドβ」の蓄積が原因。脳の神経細胞が疲労することで発生するため、心配性な日本人はアミロイドβも蓄積されやすいのでしょう。そのため日本の認知症患者が多いのだと考えられています。(図2)認知症の中でも大部分を占めるアルツハイマー型認知症の症状には、さっImpairment=き食べた食事の内容を忘れるなど、新しいことを記憶できなくなる「近時記憶障害」や、料理や身だしなみを整えるなど、これまで段取りに従ってこなしていたことができなくなる「遂行(実行)機能障害」、怒りっぽくなる、目的や道を忘れて徘徊するなどの「行動・心理症状」があります。最近の研究では、アルツハイマー型認知症の進行は他人が気付くよりも先に、自覚症状があることがわかってきました。最初の段階は「SCI=主観的認知障害)」です。これは本人が最も不安を覚え「最近、記憶力が低下した」と感じる段階で、まだ周囲からは明確に認識されません。次の段階は「MCI(Mこの段階では、本人だけでなく周囲の人々も記憶力の低下や認知機能の衰えを認識するようになります。Subjective Cognitive Im軽度認知障害)」です。ild Cognitive https://dementia-japan.org/doctors/?tab=1&keyword=&prefecture=0&address=0※専門医・施設についての詳細は、日本認知症学会ホームページをご参照ください。症リスクが年齢と共に上がるのはなぜでしょうか。近年、アミロイドβの除去システムが明らかになってきました。一つは、ドクンドクンという血管の拍動を介してアミロイドβを除去する仕組みです。アミロイドβは脳内で産出されますが、動脈壁に排出され、血管の拍動を利用して血流と逆に運び出す「(アイパッドパスウェイ)」が知られています。年齢を重ねると血管の機能が衰えていくため、排出しにくくなると考えられています。もう一つは、脳の中にある水分(脳脊髄液)が熟睡中にアミロイドβを洗い流すように除去する「す。日本人は世界的にも平均睡眠時間が少ないことが知られており、認知症発症率の高さの一つの要因とも考えられます。アミロイドβの沈着を完全に防ぐSystem(グリンパティックシステム)」でIPAD pathwayGlymphatic おくむらメモリークリニック(岐阜県岐南町)20健健康康相相談談室室奥村 歩先生「自覚症状」の段階で「自覚症状」の段階で 治療を始めることで予防できます。 治療を始めることで予防できます。
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