髪を頭皮の断面方向から見ると、頭皮に埋まっている「毛根」部分と表に出ている「毛幹」部分に分かれています。毛根では毛細血管から酸素や栄養素を受け取った毛母細胞が活発に分裂・増殖を繰り返し、毛髪を作ります。それが押し出されるように毛穴から顔を出すとやがて毛幹となるのです。毛髪は角化した細胞で、死んだ細胞の集合体。そのため、毛髪は生まれた直後の状態をピークに、抜け落ちるまで徐々に劣化していきます。健やかな毛髪を育むためには、できるだけダメージを減らして健全な状態を保つことが重要です。毛髪の最も大きなダメージ要因はカラーリングやパーマなどの化学的処理ですが、その他にも日常の中で小さなダメージが蓄積されると髪のハリが低下し、艶が失われてしまいます。髪を染めていないのに髪色が元の色より明るくなってしまっている、染めても髪色がすぐに退色してしまう方は要注意。以下の3点に気をつけましょう。水に濡れた毛髪は非常にダメージを受けやすい状態です。乾いた状態で引っ張ってもびくともしない毛髪ですが、水中で引っ張ると少し伸びやすくなります。これは、毛髪を形作る結合の一部が水中で壊れてしまうためです。そのため、髪が濡れたまま寝てしまうと寝相による枕との摩擦で髪がダメージを受けてしまうのです。入浴後は必ずタオルドライをし、ドライヤーで髪を乾かしましょう。濡れてダメージを受けやすい状態の毛髪に熱風を強く当てると熱変性を起こしてしまう懸念があります。髪を乾かす時は、一部だけが熱くならないよう、ドライヤーの先を振りながら乾かしましょう。手を当てても熱く感じない程度が目安です。日焼けをしてもヒリヒリしませんが、実は紫外線によってダメージを受けてしまうことがわかっています。帽子を被る、日傘を差すなどの物理的遮断や、日焼け止めスプレーを付けるなどの化学的遮断をすることで紫外線から髪を守りましょう。ハリ・コシのある髪を保つために大切なことは、毛髪をダメージから守ることの他に、頭皮状態を整え細胞分裂の質を上げることも重要です。バランスの良い食事や睡眠、適度な運動など生活リズムを整え、健やかな髪を育みましょう。髪を乾かすことは重要ですが、毛髪には神経が通っていないため毛髪はどんな構造をしているの?髪のダメージ要因を減らそう①髪が濡れたまま寝ない②ドライヤーの熱を当てすぎない③紫外線から髪を守る第8回「印象が良くなるヘアケア」19毛球毛球髪の根元の球状になっている部分毛細血管毛細血管髪に栄養を送り届ける皮脂腺皮脂腺皮脂を分泌する毛母細胞毛母細胞活発に細胞分裂を繰り返し、新しい細胞に押し出されるようにして髪が伸びていく毛乳頭毛乳頭毛球のへこんでいる部分 毛細血管から栄養を取り入れ、毛母細胞を作り、毛母細胞を刺激して髪を伸ばすPROFILE一般社団法人美容科学ラボ代表理事。物質工学修士。専門学校講師やオンラインサロン運営、美容メディア監修、SNS発信を通じて「科学的根拠のある正しい美容知識」の普及活動に努める。MAQUIA(集英社)、an・an(マガジンハウス)、『クイズ!脳ベルSHOW』(BSフジ)などメディアに多数出演。髪が顔の印象を大きく変えることは経験的によく知られていますが、昨今では、髪の艶が好感度に影響するという印象研究も報告されています。今回は、身だしなみとしても重要な髪のお手入れ方法についてご紹介します。理系美容家 かおり毛髪の構造毛幹毛幹地肌から出ている部分 死んだ細胞なので、傷んでしまうと自然に元に戻らない毛根毛根地肌に入っている部分
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