PlusOne638
13/36

会社の根幹に関わる事項が決議できなくなるということ。これでは何も決められない、身動きのできない企業となってしまいます。そこで、こうした企業活動の凍結を防ぐために、オーナー社長が元気なうちに活用を考えていただきたい制度が「自社株承継信託」なのです。「自社株承継信託」は、株の所有者である経営者が「委託者」となって、後継者である「受託者」に株式の2つの権限のうち、会社支配権(議決権)だけを託す契約です。契約後は権限を託された受託者が委託者に代わって議決権を行使できるので、万一オーナー社長が認知症になっても、後継者は合法的に会社の意思決定を行うことができ、認知症リスクに備えることができます。この場合、株式のもう1つの権限である財産権は、あくまで株の所有者であるオーナー社長が持っており、信託で移譲されるのは議決権のみとなります。「自社株承継信託」では、契約を結んだその日から会社支配権は受託者に移ることになります。ただし、ご自身が元気なうちは、会社の議決権を保持しておきたいという経営者も少なくありません。そこで利用できる権利が「指図権」です(図3)。信託契約で指図権を設定しておけば、契約後も受託者は委託者(指図権者)の指示に従って議決権を行使しなくてはなりません。その後、委託者の判断能力が低下した時は、その旨の診断が出た時点で指図権は自動消滅し、その後は受託者が契約通り議決権を行使することになります。中小企業のオーナー社長が全身全霊を注いで育ててきた会社が機能不全に陥るのは絶対に避けたい事態です。経営の空白期間を作らないよう、事前に自社株承継信託の活用をご検討ください。司法書士法人 リーガルエスコート代表司法書士・家族信託専門士池内 宏征判断能力が低下・喪失する前に、財産管理や相続などに関する幅広い提案を行うことを専門とし、不動産オーナーや中小企業経営者の事業承継にも多くの実績がある。また、家族信託や相続対策のセミナー・講演活動も年60回ほど行うなど、生前および相続発生後の対応に日々取り組んでいる。ティグレニュース13図2 会社機能の凍結を防ぐ「自社株承継信託」のイメージ図3 「自社株承継信託」の活用イメージ業積好調により株価が高くなり、会社の後継候補者である息子に株式を贈与するには贈与税が高すぎる未上場企業の場合、社長が認知症になると会社が機能不全に陥るおそれがある。そこで会社の議決権をあらかじめ後継者に託しておく契約が「自社株承継信託」である。委託者(父)が元気なうちは、会社の議決を受託者に指図できる。委託者の判断能力が低下した旨の診断書が出た時点で指図権は消滅する。株式の2つの機能のうち会社支配権のみを承継させる委託者オーナー社長(父)自社株の管理・運用議決権行使等を託す自社株承継信託指図権【配当・残余財産】受託者後継者(息子)託託すす信信託託制制度度をを活活用用会会社社支支配配権権だだけけをを後後継継者者にに行行使使ででききるる「「指指図図権権」」信信託託契契約約後後もも議議決決権権ががTIGRE NEWSオーナー社長(父)の認知症による会社機能の凍結を防ぐために会社支配権【議決権】自社株承継信託により後継者に承継株式=所有権財産権

元のページ  ../index.html#13

このブックを見る