カステラの機能に着目し、生まれた新商品課題を可視化すればやるべきことは決まる橘 も反映させるというのは、素晴らしいやり方ですね。上司と部下はその関係性で大きく評価が左右されてしまうところもあるので、当社ではそうした場合に異動ができるようにという配慮もしています。内部の組織固めの進め方についてお話をいただきましたが、一方で攻めに当たる商品戦略についてはどのように考えていったのでしょうか。をはじめとする日本の贈答文化が変わってきていることを実感していました。一方で手軽なギフト需要は減っておらず、そちらへ経営資源を集中することにしました。例えば、文明堂自慢の看板商品の一つ、「三笠山」で使用している北海道大納言小豆を炊き上げた粒あんを中に入れたキューブ状の「3時のおやつあんぱん」もその一つです。これは私たちが大切にしている「つなげる」という文脈を日常に振ったことで生まれました。もう一つは、機能に着目しアスリートをターゲットにした「V!宮﨑 理念から落とし込んで人事評価にコロナ禍の前から、お中元・お歳暮カステラ」です。以前からマラソンの高橋尚子さんや、最近ではやり投げの北口榛花選手が競技中にカステラを食べるという話は知られていました。エネルギー摂取という機能が知られていながら一般に普及していない理由を調べ、べたべたする、包装が多すぎる、片手で食べられないといった課題を解決して商品化しました。この機能を生かし、アスリート以外に高齢者市場などにも広げていきたいと考えています。橘 私も体を動かすトレーニングが趣味なので非常に興味を持ちました。ぜひ「V!カステラ」を試してみたいと思います。社長に就任されて18年、改めて振り返っていかがですか。震災にしても、コロナ禍にしてももちろん大変だったのですが、そのたびに社内が一致団結できたと思っています。何か事が起宮﨑 が半分になった時期もありましたが、皆で協力して取り組んだ結果、直近の決算では最高益を上げることができました。これからはもう一段ステージを上げて、そもそも夢って、楽しさって何だろうということを皆で議論して、さらに明るい未来へつなげていきたいと考えています。橘 会社が同じ方向を向くために理念をどう浸透させるか、そして、逆境にあっても常に未来志向で前向きに乗り切る考え方に大いに感銘を受けました。本日はありがとうございました。こるとそれをどう解決するか一緒に考えてくれる仲間が増えますし、解決の道筋が見えてくるプロセスに楽しみを感じています。周囲からは「悩みはないの?」とよく聞かれるのですが、あまり感じません。例えばコロナ禍で売り上げが減ったとすれば、新たな商品を作ればよいわけです。どうしたらいいかわからないから悩むわけですが、課題を可視化すればやるべきことはおのずと決まってきます。コロナ禍では売り上げ 7 1975年、愛知県生まれ。1998年、一橋大学社会学部卒業後、三菱電機株式会社に入社。2005年に株式会社文明堂新宿店に入社し、代表取締役に就任。2010年、株式会社文明堂日本橋店と合併して株式会社文明堂東京を設立。宮﨑 進司 (みやざき しんじ)株式会社文明堂東京 代表取締役社長SPECIAL
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