「ななつ星」にも採用理詰めでたどり着いた添加物不使用のパンづくり「必要なものしか入れない」仕事を終えてから深夜まで学んだ3年間鹿児島市郊外の住宅地に佇む「食パン工房カズ」。並べたパンが午前中で売り切れてしまうことも多い、人気店だ。使っている原材料は、小麦、牛乳、発酵バター、生クリーム、卵のみ。市販のパンのほとんどに使われている添加物は一切使わず、牛乳も有機牧草しか口にしない牛から絞られた牛乳を使う。「必要なものしか入れていません」という赤崎さんの言葉に、パンづくりへの信念が感じ取れる。添加物を使わない理由は「体に害があるかもしれないものは使いたくないから」とシンプルだ。でも添加物を使わずに作るのは難しくないのだろうか。そう問うと「じゃあなぜ添加物を使うかわかりますか?」と逆に問いかけられた。答えかねていると「添加物にはパンを柔らかくしたり、カビが生えないようにしたりという目的があります。じゃあ、柔らかさはどうして失われてしまうのかと言えば、水分が飛んでいってしまうからなんです」パンに使われる添加物の代表格である乳化剤は、パン作りに使われる水を蒸発させないよう、油と水を結び付ける役割がある。ならば、水の代わりにもともと乳化している牛乳を使えば水分は蒸発しにくい。また、糖類を使わない代わりに、赤崎さんは、通常5時間かかるパン作りに36時間をかけ、その多くを発酵、熟成に費やし、じっくりとうまみを引き出している。「私は、自分がこうあるべきと思うパンを原理原則に従って作っているだけなんです」め全国を転々としていたが、妻の隆代さんと結婚し、義父が営む鹿児島市の菓子・パン用材料卸会社を手伝うことになった。材料を右から左に流すだけのやり方を見かねて、「商品の特性を伝え、お客様に納パンづくりへの熱い思いを語り出したら止まらない赤崎さん2620代の頃はパッケージ会社に勤食パン工房カズオーナー 赤崎 精一さん東京鹿児島
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