神戸・長田の味を守り続けて45年まず目に入ってきたメニュー「バサ」とは?お客さんは近隣からだけでなく遠方からものれんをくぐると「バサ」と書かれた看板メニューがまず目に入る。初めて耳にする食材というだけでなく150円というお代にも驚かされる。聞けば、バサとは牛の肺とのこと。それを天ぷらにして食べるのだという。「一度食べてみてください」と店主の藤田文子さんが勧めてくれる。お店が立地する神戸・長田あたりではおやつ代わりに食べられているという。勧められるままに口に入れてみると、あっさりしていて程よい弾力があり、ソース、醤油、焼き肉のタレのどれにつけても合う。あっという間に皿が空になった。看板メニューにはもうひとつ神戸・長田の名物がある。「ぼっかけうどん」だ。ぼっかけは、牛すじを出汁で甘辛く煮込んだ料理だが、これについては手書きの解説が店に置かれている。「ぼっかけは牛すじをぶっかけるという意味がなまったそうです。うどんやそばなどの汁ものに牛すじがのったばあいにぼっかけといいます」。聞けば親戚の子どもが「長田区のすてき発見」をテーマにした授業で小3の時に書いたものらしい。そう「天ぷらやすだ」は、神戸の下町・長田のソウルフードが味わえるお店なのだ。 藤田さんの母親が当地で牛肉のホルモンを専門に扱う小売店を開いたのが45年前のこと。店が入っていた長屋が老朽化し、神戸市の再開発計画の網にかかったため、いったん移った仮設店舗の広いスペースでバサを天ぷらにして出すようになった。「牛1頭分のホルモンをを丸ごと仕入れていたのですが、その中でもバサは味もないし、脂もないから料理に使われることはなかったんです。でも捨てるのはもったいないでしょ。そうしたら近所で天ぷらにして出している店があると聞いて、まねしてみたんです」と屈託なく笑う。 看板メニューのひとつ「バサ」の天ぷら30天ぷら やすだ代表 藤田文子さん東京神戸
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